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月号で2013年の中国経済の最大の問題点は、過剰投資に伴う過剰設備問題であると述べたが、その最先端を走っているのが海運と造船である。 ● 「市場の見えざる手」に調整を任せるのか、即ち、放任されるのか? (一) 実態と状況の推移 i) 受注状況 市況悪化に伴う船価暴落で赤字受注となる為新規受注に消極的とならざるを得なかった。
ii) 稼働状況
iii) 正念場の13年の状況
中国は、13年は造船所の36%が不稼働となる。(CGTベースでは不明) 韓国は、13年は5%の80万CGTsが不稼働となり、新規受注の90%を占めた上位8社の設備の20%が余剰となる。
(二) 懸念される中国の造船助成策 1) “国船国造”と“国油国船”による保護政策 i) 「中国がVLCC 発注計画が始動」海事プレス8/Novしている。 隻数は40~50隻と言われている。 COSCO等の国営海運が大手国営造船所に逐次発注されている。 但し、船価が市場価格の$90M弱であるなら、造船の助成策とはなっていない。 何かのカラクリがあるかも知れない。 ii) 民営最大手のRSHI(Rongsheng Heavy Industries)や国営でも小企業は対象外で大手国営造船所と大手国営海運会社に対する助成策となっている。 大手国営企業保護で精一杯で国営小企業や民営企業迄手が回らず放置されていると解釈すべきであろう。 iii) 中国の高官は海運自由のルールを否定するものではないと言っているが、事実は違っている。 困るのは40~50隻のVLCCの保護的な発注である。 これは市場の自律的な回復機能に水を浴びせるものであり、加え、シェールガス革命でVLCCの需要に先行き不透明感を増幅させるものであり歓迎されない事である。 2) 戦艦の拡充とオイルリグへの参入 - 造船不況対策の一環 胡錦濤前主席が海事関係の充実を呼びかけたが、恐らく尖閣諸島や南沙諸島等の領土問題の先鋭化による戦艦の拡充とオイルリグへの積極的な参入を目指したものと思われる。 i) 戦艦建造
ii) オイルリグ
(三) 結びに代えて 1) 造船業の国営と私営の仕訳は適切ではなさそうである。 中小の国営企業は地方政府の支配下である筈で日本流の公営企業との呼称が相応しいと思われる。 現段階でこの公営企業と民営企業の80%が姿を消す事となりそうである。 注目されるのが民営最大手のRHI動向であるが、中国国営のファンドも同社に投資をしている筈であり同社へ単純に波及する事とはならないと思われる。 但し、経営の内容次第であろう。 2) 造船の過剰設備の縮小は必至である。 通常、自由主義経済体制下では縮小には血と涙と時間が必要である。 それを象徴するかの如く12月に発生した江蘇東方造船所(JSE International)の数千人の下請け労働者が賃金未払と遅延に対する抗議ストが発生した。 13年はこの種の労働争議の多発は避けられないであろう。 3) 13年の造船能力は6,100万CGTの竣工予定が4,000万CGTの状態は1/3が設備過剰となっている事である。 中国鉄鋼業は生産能力10億トンで生産量が7億5,000万トンで約25%が過剰設備となっている。 この状態と比較しても恐るべき過剰設備である。 然しながら、中国は通常のOECDの自由主義経済とは違い政府の社会主義的管理政策、即ち、「見える手」で予想より早い設備縮小が可能かもしれない。 そうでなければ80年台後半の海運・造船の長期低迷の再来となりかねない。 4) 造船の今後の推移は、過剰設備を抱えている鉄鋼等の産業の嚆矢となる事は間違いないであう。 古典的な理論である過剰生産恐慌論が復活しかねない厳しい状況である。 5) 参考資料はFairplay-9/Aug、TradeWind-12/Oct、Lloyd’s List-14/Nov, 3/Jan/13等
2012年は過剰船腹と中国経済の減速を主因として海運市況は全体として低迷が続き想定内で特筆すべき動きとはならなかった。 然しながら、海運市場で無視できない記憶に留め置くべき事件が多発している。 今回は昨年に取り上げたテーマの中から状況が変化したもの、説明不十分で追加説明を加えたい事柄やテーマとする機会が持てなかった事件を取上げる事とする。但し、新鮮味が欠いた内容となる事は予め承知置き願いたい。
1) 海運市況はスポット市場の成約の集積 2) 新造船の発注と竣工に常に2~3年の時間差がある。剰船腹が顕在化した頃竣工のピークを迎える事となり加速度的な過剰船腹を来す。 3) 不動産と共通「神話の誕生」と過剰投資 4) 好況時の過剰投資は海運だけの問題ではない。然しながら、海運は上述の様に極端な投資が発生する性癖を持っている。但し、「性懲りもなく繰り返される過剰投資」は経験済みの事であり、良く耳にするこの「嘆き」は、それ自体市況に翻弄され経験を忘れた判断ミスの自己表示である。嘆く暇があったらそれを利用する姿勢こそがスマートである。 又、昨年の様な船員費も稼げない水準の市況の継続は疑問である。市場の自律的な調整機能を忘れるべきではなく小幅ながら反動があったし今後もある筈である。 (二) 爆弾低気圧と旱魃にハリケーンサンディが加わった2012年 - 9月号関連 1)8月にエルニーニョとなったと報じられたが、10月には解消された。その結果、エルニーニョでもラニーニャでもない気候となっている。従って、米国とロシヤ・ウクライナ旱魃の可能性はなくなると思われる。又、昨年同様の凶暴な異常気象が発生すれば温暖化が原因であると言わざるを得ない。ラニーニャ・エルニーニョとは別に偏西風の蛇行と異常気象との関連性が気になる所ではある。何れにしても水と空気と気温の合成で発生する気象は気紛れではあり異なった気象を演出する事があるかも知れない。 2) 北米東岸では、10月末のハリケーンサンディの米国北東部直撃である。2005年のカトリーナの1,000億ドルに次ぐ$200億ドル損害を齎した。損害額に比例するかの如くPCタンカー(ガソリン等の石油製品輸送用)と原油輸送に若干の影響を与えた程度であった。一方、日中韓のアジアの東北地域では、春の爆弾低気圧の発生(日本のみ)や大型で強い台風の12-15(2012の12付す)号、12-14号(小型)、12-16号が、東シナ海の世界最大の原材料の揚荷港の集散地帯を直撃し恰もカリブ海の2005年の如き気象となった。 これらの異常気象は市況が軟化した状態での直撃であり市況への影響はい小さかったが、需給がタイトな状態では強い影響を与える事は間違いなく記憶に留めて億年である。
海運を国家の基幹産業として育成する為、次の様な条件を満たす船会社(船主とオペレーター)は優遇税制(実質無税)が得られるという海運支援政策が強く打ち出されている; i) 船主の場合: 船舶はシンガポール国籍とする事。
ii) オペレーターの場合:
2) マリタイムクラスターとしての評価 ロンドンと拮抗する立場を確立した事は万人が認める所である。 然し、英語圏とは言え国民の大半が中国系であり、その中国の高度成長と共に発展した一面もあり中国の影響を強く受ける可能性がある事が問題である。 その理由は中国のは契約に対する感覚と認識(=Chinese standard)はロンドンで確立されたGlobal Standardと異質なものである。 これが新たなStandardとなる事は望ましくない。 これを阻止する為にロンドンとのタイアップの強化が望まれる。 ご参考まで、11年10月の記事を掲載する事する。 「In China real negotiations begin after the signing of a contract, which is just an agreement to work together」LL 2/9/11 3) 日本の海運関係者にとってマリタイムクラスターでの成功は悲願である 従って、EU並のトン数標準税制が最低必要である。 然しながら、日本の低成長が傭船市場を低迷させている。 造船も円高で韓国と中国の後塵を拝している。 又、マリタイムクラスターの最重要な役割を担うシップブロカーも協会員が50社を切る様に半減しており海技者の労働力の流動性もない事等で悲観的にならざるを得ない。 マリタイムクラスターの成功を願うより日本の海運業のシンガポールへの逃避を心配すべきかも知れない。
i) 粗鋼生産能力が10億トン(11月号より1億トン増)と言われる過剰問題である。 これはCape-sizeBCを中心として海運市況低迷の長期化をもたらす危険性がある。 「海運市場が自律性を喪失していない通常の調整期間は3/4年必要である」(11年5月号)と述べたが、この調整期間の長期化は避けられず、後述の造船保護策と重複して非常に危惧される。 ii) 過剰設備縮小の必要性が強いのが造船業である。 目下の処、縮小よりも「国貨国運・国船国造」戦略の下、VLCC等の大型船の船台を所有の大手2社の国営造船所の保護策が中心である。 従って、対象外の中小の国営造船所や民営の大手造船所の将来がどうなるのかが問題となる。 何れにしても他産業の先触れとなるだけに注目される所である。 この人為が経済原理を大きく歪曲しているのであれば、ドルショック、オイルショック等の様にショックと言う形で混乱を起こす危険性がある。 問題点は貨幣統合で金利(南欧の不動産バブルの原因)を含めた金融政策は統一化されたが、税制や財政政策が後回しになっている事である。
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